一人旅
普段は出来るだけ遠出しないようにしているけれど、たまに何処かに行きたいと思う事がある。
そんな時だけ周りがビックリするくらいの行動力を発揮する。
今回がまさに良い例だった。
火曜日に仕事が終わって、元同僚と飯を食べダーツを投げ、家に帰ったら23時過ぎだった。
帰宅後、スーツから私服に着替えて簡単な荷物だけ準備して車に乗り込んだ。
日付が変わる頃には高速に乗っていて、日が昇る頃には愛知県まで来ていた。
1人で運転し続けるのはキツイなと思いながらも、黙々と進んだ。
とりあえず寝てなかったから適当に泊まれる場所を探して仮眠。
起きてから名古屋に向かい、ストリートミュージシャンで溢れかえる公園に辿り着いた。
こっちでは警察の関係もあり駅の周りからも姿を消しつつあるけれど、地方は未だに多くの演者がいて活気があった。
何組かの演奏を聴きながらプラプラしていると、どこから来たの?と話しかけられ、目的もなく千葉からだと答えると驚いた様子だった。
その人を目当てに若い子が何人も来ていたのだけど、そこを差し置いて演者の方が凄く話しかけてくれて、歌が好きだと答えたら夜にもまたやるから何曲か歌いませんか?と言われたので承諾した。
夕方前に公園から名古屋市内に再び戻り、名古屋コーチンだけは食べておこうとお店を回った。
お腹も膨れて、やる事がなくなり観光でもすれば良かったんだけど疲労からか休みたいなと思いカラオケに行った。
夜も歌うし声だけ出しておこうという感じで淡々と歌っていると、隣の部屋の人が間違えて入ってきた。
「あ、すみません。間違えました」
割とよくある事だから気にも留めなかったんだけど、15分程してその人がまた部屋に来た。
「あのー、良かったら一緒に歌いません?」
という彼も1人カラオケしていた。
それなりに歌える人なのは漏れてくる音でわかっていたから承諾して2時間ほど不思議な時間を過ごさせてもらった。
途中で歌うのをやめて世間話。
やっぱり目的もなく名古屋に来る人が珍しいのか、やたら質問攻めにあった。
そうこうしていたら良い時間になってきたから会計を済ませ公園に向かう事にした。
昼間よりも夜の方が更に賑わいを見せ、一緒に歌いましょうと言ってくれた人を探すのに苦労した。
2人組でコブクロとかゆずを歌う彼らに、どんなものを歌うのか?と聞かれ何組か答えると、じゃあそれでいきましょうか!という感じでとりあえず1曲。
マイクもアンプもない。
風もピタリと止んでいて、カラオケの効果なのか声が通った。
向かい側で演奏していた別のストリートミュージシャンが切り上げて見に来た。
歌い出した頃には僕らしかいなかったのだけれども、歌い終わる頃には8人くらいが聴いていてくれた。
ギター弾いてくれてた人から歌を褒められた。一緒に歌ってくれてボーカルの方からも良い声だと褒められた。
その後は知っている曲だけ参加するって形だったけれども、そのまま2時間近くそこで歌っていた。
最終的には30人くらいのギャラリーがいて、また会えたらいいなという事で、ゆずの「いつか」を歌った。
とても至福の時間だった。
ノープランで愛知県に来て、まさか音楽だけやって帰るとは思わなかったけども楽しかった。
彼らと居酒屋に行って色々と話してLINEだけ交換して後にした。
帰りはこっちの友達に電話しながら4時間強かけて辿り着いた。
出発してから27時間。
再び家に帰ってきて死んだように寝た。
次はどのタイミングで一人旅してやろうかと気が向くのを待っていようと思う。