友と友
仕事が終わり同級生兼同僚である友人と飯を食いながら仕事感について語った。
仮にA君としよう。
終電もなくなりタクシーで帰るというAを、流石にそのままにさせておくわけにはいかんと1度家まで戻り車を取ってA宅へと走らせた。
昔から性格や考え方は似ていないのに何故か好きになる対象は同じで、帰りに寄ったコンビニで飲み物はと聞かれ、適当に頼むと言ってAが買ってきたのは1番飲みたい物だったりとかね。
なんかシンパシーというかそういものの存在を否定出来ずにいるのは、こういうのが原因なのかなと。
その帰り道。
真っ直ぐ帰れば20分なのに、6年ぶりに煌びやかな夜の街へと向きを変えた。
本当にふと、そっち方面を通ろうと思っただけだったが、このタイミングで電話が鳴った。
何年ぶりかわからない発信主の名前が表示されて驚いた。
彼はBとしよう。
6年前。
私はいわゆる水商売をやっていたのだが、その世界に誘ってきたBが、これまた高校の同級生であり、冒頭のAとも同じクラスであった。
電話越しの彼はなにやらご機嫌で、相変わらずあの街で夜の仕事を続けていた。
今、近くを通ってるんだよね。
という一言が出なかった。
通話時間15分。
特にコレといった会話をするわけでもなく、相手の周りがやたらと騒がしい事もありよくわからないまま電話は切れた。
誰と電話してるのー!?
と女の子の声が聞こえたが、Bはいつだったか覚えてない同級生だよと答えた。
なんだか、もう会うことさえもダメなんなはないかと勝手に思っていて、たぶんこの6年で生まれた価値観の溝は友という肩書きを持ってしても埋まるものではないと感じた。
彼が悪いわけではない。
ただ、6年前は確かにあった絆が今はもう見る影もなく、お互いを変えてしまったらしい。
友と友と私。
この3人で顔を合わせるのはひょっとすると死ぬまで起きないんじゃないかと思わざるを得なかった。