線路とオッチャン
北海道滞在中に小樽に行った。
3年前の夏も札幌から車を走らせて目的もなく小樽に行った事がある。
小樽駅はレトロな雰囲気が漂っており、雑貨屋に置いてある目を引くオルゴールのような感じの佇まい。
あとはウォール街とか運河が有名なのかな?とにかくレトロだ。
とりあえず運河で写真を撮って、近くに何人もいる人力車に乗った。
人力車のお兄さんの案内で街並みを一通り楽しんで、建物とか歴史の話を聞いた記憶がある。
今回、小樽に向かったのは線路が見たかったからだ。
私達が普段の生活の中で出くわす線路ってのは、必ず遮断機が付いていて、当たり前だが電車が通る為に枕木を含めて全てが見やすく小綺麗にされている。
だが、私が求めていた線路は立ち入っても文句を言われない線路だ。
所謂、廃線と言えばいいのか。
今はもう使われていない線路の跡地で、電車も車も走る事はない。
そして、好き放題に伸び切った草木が線路の左右を覆っていて、ジブリの世界が飛び出してきたかのような風景がそこにはあるのだ。
人力車に乗っている時は、そんなものが街中に存在している事すら知らずに眺めていたが、今回の小樽は完全に線路の為に来たと言っても過言ではない。
そんな線路を求めて歩いていたのだが、ちっとも見つからなかった。
小樽はあちこちにベンチと灰皿があり喫煙者に優しい仕様となっていたので、炎天下の下ですっかりバテた私もベンチに何度も腰を下ろした。
すると、1人のオッチャンが近づいて来て勝手に話し始めた。
『あんた、こっちの人じゃないだろ?何処に行きてーんだ?』
なんなんだ、この怪しげなオッチャンは!
つい最近、イタリアでこういうオッチャンに捕まると、ぼったくりバーみたいなとこに連れていかれるというのをテレビで見たばかりだったので、警戒心がオーラとして具現化して体全体をまとっていたに違いない。
『線路を見たいんです』と、おそるおそる伝えると
『線路か!あそこは人気だけどわかりにくいからな。』とか言いながら説明してくれた。
最後に名刺を何故か渡されて、その近くで土産屋を営んでいる社長さんだった事が判明した。
オッチャンに言われた通りに歩いていると10分程で線路が現れた。
近くに幼稚園があるのか知らないが、やたら園児がたくさんいたので子供達がいないところを探して写真を撮ったりしていた。
『こんなもんか』とも思ったが、やはり街の中に路面電車でもないのに線路があるのは違和感と風情があった。
線路を楽しんだ後に、オッチャンに勧められた寿司屋さんに寄ったが、ここが絶品だった。
初日も海鮮丼を食べたが、ここのウニは本当に甘くて美味しかった。
しかも、値段も良心的で地元民だけが知っている隠れ家的なお店だった。
小樽は北海道に行ったら必ず寄りたい街の1つになった。
次は何年後かわからないけれど、今度はオッチャンの土産屋で何か買ってあげようと思う。
又吉さんの火花が賞を取ったニュースを見たので、ちょっと文学青年を気取った文章を書いてみたが、安い文章だなーと思った今日この頃。