踏切
朝、遠くからカンカンカンカンと一定のリズムで踏切は歌う。
もうす電車が来るぞ!と言葉にしなくても、ここにいる人達には十分伝わるのだ。
背広を片手に持ち、ハンカチで顔を拭きながら小走りになるサラリーマン。
身の丈に合わないブカブカな制服を着て、子供から大人へと日々成長している学生。
少し乱れた髪と化粧で、何かに捕まらないと立っていられない20代の綺麗なのになんか残念な女性。
様々な人達があの音を共有している
朝から不快だと思う人もいる。
目が覚める人もいる。
踏切の役割は注意を促す事。
無視して進もうとする者に対しては
優しく手を広げて静止を試みる。
ただ、それだけなのに捉え方がそれぞれ違っているのは面白い。
街灯がない田舎ならば、その光は迷い人の目印となるだろう。
盲目の人にとっては、その音がする方が目的地だと教えてくれるだろう。
踏切が何かしたわけじゃない。
文句一つ言わずに、黙々と自分の仕事をこなしている。
365日、休みもなく朝は4時から夜中は1時頃まで働き続ける。
そんな人間はいない。
そんな鉄人がいたら身体を壊してしまう。心が閉鎖されてしまう。
誰になんと言われようが変わらない。
踏切は今日もけたたましい音を立てながら歌い続けている。
このブログは50m先にある踏切を見ながら書いてみた。